新型コロナウイルスで窒息状態の中国・武漢

 数年前の2月12日、あの中国湖北省・武漢市を訪れた。早朝、武漢天河国際空港に到着後、市中に向かう道路は雨が降ったせいか排水が悪く、水浸し状態。朝もやで周囲の景色がぼやっとする中、車の中からは建設中の高層ビル群が次々に目に飛び込んでくる。

武漢天河国際空港から武漢市内への道――高層ビル建設が進むが、周囲の空気がもやっとし、景色がぼやけている

 目的は、武漢の東湖国家高新技術開発区、武漢鋼鉄、武漢光谷ソフトウェアパーク、武漢新港などの現地調査だった。市の中心部を長江(揚子江)が貫流し、川の東側の東湖周辺では春にサクラが咲く。例年3月に開催される「武漢桜祭り」は有名だが、少し早すぎたため、小さな蕾(つぼみ)くらいしか見ることができなかった。

 人口1100万人の大都市にもかかわらず、市街のあちこちに多くの湖が散在する。全市面積の4分の1を水域が占めるため、「百湖の市」とも呼ばれている。

 経済発展もあり、ある会合で、いきなり「日本は貧乏だ」と吼える中国人エリートに出会った。唐突にそう話しかけられて多少面食らったが、その奢りまくった態度にムッとしながらも、取り敢えずは無視した。反論するのも面倒だし。

長い列を成して貨物車が出入りする武漢新港の入り口
貨物の量は年々増加傾向の武漢新港

写真(3点) Wuhan©KazunoriShirouzu

 いま、その武漢が「新型コロナウイルス( COVID-19 )発生の街」ということで世界中から非難されている。2月10日時点で武漢市の死者は748人、感染者数は1万8454人(湖北省衛生健康委員会)、中国全体の死者の4分の3以上は武漢で確認されている。そのため武漢は数週間にわたって封鎖されている。

 湖北省共産党委員会は初期対応失敗の責任を問われて省衛生健康委員会の張晋・党組書記と劉英姿主任のトップ2人を解任したが、それだけでは済まないだろう。相も変わらず北京の党中央で熾烈に繰り広げられる権力闘争も絡み、このドサクサに紛れて政敵を葬る更迭人事(=報復&追い落とし)が次々に断行されるはずだ。首謀者は習近平国家主席か、あるいはその政敵か。これからが本番と思われる。

 それはそれとして、来年のいま頃には武漢に賑わいが戻り、楽しい桜祭りの開催があるのかも気にかかる。ただし、今回のCOVID-19の感染原因&媒介ともされるコウモリやセンザンコウなど、市場や街中で売られている野生動物・昆虫の類のゲテモノ料理は小心者の私には口に入れる蛮勇もない。

(白水和憲)

「新型コロナウイルスで窒息状態の中国・武漢」への1件のフィードバック

  1. やはり、中国共産党中央は責任の所在を巡る地方人事を発表、蒋超良・湖北省党委員会書記、馬国強・武漢市党委員会書記の両トップを解任した。後任にはそれぞれ応勇・上海市長、王忠林・山東省済南市党委員会書記が就く予定(2月13日新華社電)。これだけで済むのなら地方レベルでのトカゲの尻尾切り、中央人事にまで波及すれば権力闘争のはじまり。習近平国家主席の狙いは、自身の権力固めか、それとも政敵の反撃ありか。

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