ミャンマー軍事政権に拘束されている民主化指導者、アウンサン・スーチー氏(Aung San Suu Kyi、80歳)の心臓疾患の病状悪化が懸念されている。
9月初旬、スーチー氏の次男で英国在住の次男、キム・エアリス氏(ビルマ名:ティンリン Htein Lin)が英報道機関に対して、「どこで拘束されているのか、治療を受けているのかどうか、何もわからない。残酷で命に関わる。即時解放と専門医による緊急の医療処置を求める」と訴えた。
しかし、その後の経過はまったく不明のままで、「生きているかどうかも確認できていない」とキム・エアリス氏。さらに、「母は骨と歯茎にも問題があり、3月のミャンマー大地震で負傷した可能性もある」と。
一方、ミャンマー軍政のゾーミン・トゥン報道官はキム・エアリス氏の発言の後、「でっち上げられた情報であり、彼女の健康状態は良好だ」と発表、「このフェイクニュースは、ミンアウン・フライン国軍総司令官の訪中の成果を失墜させるために流されたものだ」と反論。
アウンサン・スーチー氏(2019年10月21日、於:東京・明治記念館)
写真= ©KazunoriShirouzu
ミャンマーは2021年2月、クーデターによる軍事政権樹立以来、最大都市ヤンゴンだけでなく国内各地で騒乱が起こっている。軍は大規模抗議活動が起こるたびに武力鎮圧したが、それでも沈静化せず、いまでも武装蜂起が広範囲に頻発している。
軍に拘束されたスーチー氏は扇動、汚職、選挙違反など19件の罪で計33年の懲役・禁錮刑(その後、27年に減刑か)の判決を受け、現在服役中(場所は不明)。スーチー氏はいずれの罪状も否認している。
関わりの深い中国やアセアン、日本の仲裁が大いに期待されるが、解決に向けた軍政との話し合いは実現していない。
(記・白水和憲)