1月30日、駐日ロシア特命全権大使のニコライ・スタニスラヴォヴィチ・ノズドリェフ(Николай С. Ноздрев)氏はロシアが世界から悪の権化と指弾されていることに強く異議を唱えた。
写真=©KazunoriShirouzu
日本においても欧米諸国と歩調を合わせるように、「ウクライナ=善、ロシア=悪」との図式がずっと続いている。
新聞・TVでウクライナの惨状を目にするたびに日本では支援と激励の声が高まる。確かにウクライナ国民の窮状は目を覆いたくなるほど酷い。何の罪もないウクライナ国民が犠牲を強いられているのは何とも忍び難い。ただ、その報道がどれだけバランスの取れた正確な情報なのかどうかは日本人はあまり関心がなさそうだ。
「ロシアの言い分も聞こうじゃないか」と言った途端、背後から矢が飛んできそうな空気に包まれる。日本全体が無邪気な正義感に覆われている感じがする。
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これまでのウクライナとロシアが辿ってきた歴史すら十分に理解しないまま、日本では官民ともにウクライナ支援に前のめり状態。戦争で一儲けする連中の話にまんまと乗せられ、まさか戦争を長引かせるための資金要請だとは気づかない。
もっと言えば、日本政府は能登半島地震の復興を遅らせてまでもゼレンスキー・ウクライナ大統領の言い値で(たかりのような)資金要請に応じているのは何とも奇異だ。能登復興や高齢化社会への対応などでいまの日本にはそんな大盤振る舞いできるほどの資金的余裕があるはずがなかろう。
日本政府ができることは、一日でも早く戦争終結に向けた外交努力と国際協力に奔走することである。しかしながら、日本政府の脆弱な外交能力に期待する人はほとんどいない。
妙にロシアに肩入れするつもりも毛頭ないが、日本がアメリカやイギリスの手先となって「ロシア、怪しからん」の大合唱に加わり、単眼的な人道主義に引きずられるのは何の解決にもならない。
そもそもウクライナやロシアに行ったことがなく素人同然の個人的感想を吐き散らすコメンテーターや、特定の欧米メディアのひも付き学者や御用ジャーナリストは害でしかない。即刻メディアから消えてもらいたい。
バランスの取れた正確な情報が日本国民に届いていないのは不幸なことではないか。
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(※ ニコライ・ノズドリェフ氏:1992~1993年国際基督教大学(ICU)で修学、1994年モスクワ国際関係大学卒。2018年~2024年ロシア外務省第3アジア局長、2024年1月19日付けで駐日特命全権大使に任命。日本語と英語に堪能。経済学博士)
(註: ニコライ・ノズドリェフ駐日ロシア大使の発言内容はご本人の承諾を得る必要があるため、発言の詳細は当コラムでは控えます。上記文章はあくまで白水個人の見解を披瀝したものです)
(記・白水和憲)