“父は元大統領”“母は元首相”というバングラデシュ新首相の血統

2026年2月17日、アジアの一角にまたもや“血統”を武器に頂点に上り詰めた国家指導者が誕生した。

2月12日バングラデシュ総選挙で3分の2以上の圧倒的議席を獲得したBNP(バングラデシュ民族主義党)のタリク・ラーマン党首(57歳)である。

父は元大統領ジアウル・ラーマン(Ziaur Rahman、1981年に暗殺)、母は元首相カレダ・ジア(Begum Khaleda Zia)という政治一族の血統。

バングラデシュは2024年8月の政変によって、当時の首相シェイク・ハシナ(Sheikh Hasina Wazed、2025年11月に死刑判決)がインドに亡命。以後はノーベル平和賞受賞者のムハンマド・ユヌス首席顧問率いる暫定政権によって国が運営されてきた。

 

この2月まで暫定政権(2024年8月8日~ 2026年2月17日)を率いたムハマド・ユヌス氏

(2025年5月30日、於:東京)

写真撮影=©KazunoriShirouzu

 

実は、新首相となったタリク・ラーマンは2004年ダッカ手榴弾事件などいくつもの容疑で終身刑判決を受け、2008年9月には英国に亡命。ようやく2024年に控訴裁判所で無罪となり、2025年12月、17年ぶりにバングラデシュに帰国、そのまま選挙戦に臨んで大勝利した。タリク・ラーマン帰国の5日後に母カレダ・ジアが亡くなっている。

タリク・ラーマンにはこれまで数々の汚職容疑が表沙汰になった過去を考えれば、果たして今後、安泰な国家運営を期待してよいものかどうか、一抹の不安がよぎる。しかし、すべてはバングラデシュ国民の選択に委ねるしか方法はないのだが。

バングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカの南アジア4国はいずれも血統(血縁)を拠り所とした政治指導者を排出してきた。そのため、対立する政敵を相手に血みどろの抗争劇を演じ、粛清と報復の連鎖を生んできた。

ちなみに、現在インド亡命中のシェイク・ハシナはムジブル・ラーマン初代大統領(Sheikh Mujibur Rahman、1975年に暗殺)の長女である。

(註:同じ“ラーマン”でも、シェイク・ハシナの父ムジブル・ラーマン大統領とカレダ・ジアの夫ジアウル・ラーマン大統領を混同する記述が日本には多いので注意が必要だ)

(記・白水和憲)