面妖な人事と解散騒ぎで混乱のスリランカ政界

 

スリランカ政界が奇々怪々な様相を呈している。

事の発端は、関係が悪化したウィクラマシンハ首相をシリセナ大統領が解任し、ラジャパクサ前大統領を後任の新首相に据えようとしたことだった。

しかし、国会でこの新首相人事が不信任となる一方で、大統領の首相解任権や解散表明をめぐって異論(違憲論争も)が噴出。その解釈については最高裁も12月7日に最終判断する模様。

この背景には、スリランカの政府債務(2018年見込み、IMF)が邦貨換算で7兆円を超え、GDPの8割弱にものぼるが、その多くがラジャパクサ前大統領の負の遺産で、過度の中国依存(資金援助)がもたらしたとの批判が多い。そのために、先の大統領選では国民の反ラジャパクサ感情によってシリセナ大統領が誕生した経緯がある。

2013年3月15日Sri Lanka Business Forumで伝統儀式オイルランプ点灯の後に開会テープカットする当時のラジャパクサ大統領(©2013KazunoriShirouzu)

前大統領は中国が仕掛けた債務の罠にはまり、南部ハンバントタ港の使用権(99年間)を11億ドルで中国に奪われた。同じく中国の融資で建設されたラジャパクサ国際空港も経営不振に陥り、中国から譲渡を迫られている。(空港名は本人の名前<ラジャパクサ>に由来する)

ラジャパクサ大統領時代に急増した大型インフラプロジェクトは中国の協力を前提に進められた。しかし、中国はそのプロジェクトを融資の担保として押さえ、返せなければ取り上げるとばかりに、着々とスリランカを植民地化する方向に動いている。中国との契約改善交渉に難儀するシリセナ大統領が、よくも悪くも前大統領の持つ中国人脈にすがろうとするのも無理からぬこと。

そういう流れでないと、この鵺(ぬえ)みたいな、面妖な人事案になるはずがない。

(白水和憲)

「面妖な人事と解散騒ぎで混乱のスリランカ政界」への1件のフィードバック

  1. やっと7週間の政治混乱にケリがついた。12月13日、最高裁は議会解散命令を憲法違反、ラジャパクサ氏の首相就任も「合法とは言えない」と判断したことで、15日ラジャパクサ前大統領は首相を辞退、16日にウィクラマシンハ氏が首相に再任された。親中国のラジャパクサの復帰を好まないインドが、裏で政治工作をしたのでは、との噂でもちきりだ。(続報:白水和憲)

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