日本・ミャンマー合作映画『血の絆』、再上映会

2023年7月から10月にかけて国立映画アーカイブ(東京・中央区京橋)で追悼企画「逝ける映画人を偲んで 2021-2022」上映会が開催中。85作品(72プログラム)、100名以上の映画人の業績を回顧・顕彰している。

国立映画アーカイブ(東京・中央区京橋)

写真:©KazunoriShirouzu

8月20日の上映予定表

写真:©KazunoriShirouzu

 

8月20日は千野晧司監督の日本・ミャンマー合作映画『THWAY 血の絆』(2003年、201分)。ジャーネージョー・ママレーのベストセラー小説「血の絆」(原田正春訳、毎日新聞社刊)を原作とした作品。

『血の絆』の映画ポスター

原作はジャーネージョー・ママレー著『血の絆』(毎日新聞社刊)

写真:©KazunoriShirouzu

 

<ストーリー>

第二次大戦末期、幼い娘由美を日本に残したままインパール作戦でビルマ戦線に従軍した日本兵吉田隆夫中尉。戦地でビルマ女性マトエトエと出会う。2人の間には男児が生まれる。戦後、隆夫は戦犯容疑で現地収容所に収監され、厳しい取り調べを受ける。それがたたって、復員の翌年に亡くなる。

隆夫は病床で「ビルマに残してきた息子に会いたい」と繰り返した。父親のその願いを胸に、12年後、大学でビルマ語を学ぶ由美は異母弟モンモンを探す旅に出かける。

日本軍に協力したという理由で村を追われた母親マトエトエが早くに亡くなり、モンモンは寺院に預けられる。しかも日本人の血を引くことで周りから差別を受けながら生きてきた。自分は不義の子と思い込み、日本人を憎悪するモンモン。中部のマンダレーで大学に通うモンモンをやっと探し出した由美だが、モンモンの頑なまでの拒絶になす術がない。

それでも血のつながりを信じる由美。何度も何度もモンモンを訪ね、話しかけるが、モンモンの心は閉ざしたまま。2週間の滞在期間を終え、由美が日本に帰国することを知ったモンモン。

モンモンは狂ったように走り、家から空港に駆けつける。由美が帰国便のタラップを上りかけたその瞬間、遠く背後からモンモンの絶叫が。

「姉さん!!!!!」

振り返る由美の目からはあふれる涙が、、、。

…………………………

201分(3時間21分)もの長編映画であるだけに、随所に紆余曲折のストーリーが散りばめられている。

「ジャワは天国、ビルマは地獄、死んでも帰れぬニューギニア」とまで言われたビルマ戦線。この無謀な戦争に巻き込まれた日本兵とビルマ女性の悲恋物語で終わるのではなく、今の時代にも通じる人間模様と血のつながり(血の絆)に焦点を絞った秀作である。ラストはモンモンの泣き叫ぶ声に振り返る涙顔の由美のクローズアップ。見事な終わり方だった。

ヒロイン由美役に抜擢された新人女優・麻生あかりはほとんどをビルマ語(ミャンマー語)で演じ切った。そのチャレンジ精神は天晴れである。他の日本映画もぜひ見習ってもらいたいものだ。

 

残念ながら、千野監督は昨年12月8日に91歳で亡くなられた。合掌。

 

弊社(株式会社アジアにじゅういち)新橋事務所を訪れ、映画を熱く語る千野監督。当時66歳。

写真:©KazunoriShirouzu

 

ちなみに、千野晧司氏は『密約-外務省機密漏洩事件』『海よ眠れ ―― Midway , Sleep in Peace』『滋賀銀行九億円横領事件 女の決算』『深川通り魔殺人事件』など社会派とされるテーマを得意とする監督である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E9%87%8E%E7%9A%93%E5%8F%B8

 

(記・白水和憲)