タイ元首相タクシンの院政、再復活か

この8月14日、タイ憲法裁判所はセター・タウィーシン(Srettha Thavisin)首相に対して「有罪判決を受けた過去のある人物を閣僚に任命したことは憲法の“倫理規定条項”違反に当たる」と判断、解任命令を出した。その結果、現職首相が失職するという異例の事態に至った。

8月14日に首相を失職したセター氏

写真=©KazunoriShirouzu

 

8月16日、国会は議員投票(下院議員のみ)でペートンタン・シナワット氏(Peathongtarn Shinawatra、タイ貢献党党首)を新首相に選んだ。

セター氏が首相に就任したのが2023年8月、わずか1年の短命政権だった。一方のペートンタン氏は37歳、史上最年少のタイ首相となった。

8月18日に新首相就任予定のペートンタン氏

写真=タイ貢献党のHPから

 

ペートンタン氏は2001年2月から2006年9月まで首相を務めたタクシン・シナワット(Thaksin Shinawatra、75歳)元首相の次女である。また、2011年8月から2014年5月まで首相だったインラック・シナワット(Yingluck Shinawatra、57歳)はタクシン氏の実妹である。

シナワット家からはペートンタン氏で3人目の首相となる。

タクシン氏はインラック時代には背後であれこれと指図していたことで有名だったが、政界に入って3年程度のペートンタン氏はまだ誇るべき実績もなく、父親の言いなりに動く操り人形になるのは目に見えている。インラック時代と同様、タクシン院政の再復活である。

仮釈放されたとはいえ、検察から不敬罪で起訴されているタクシン元首相

写真=©KazunoriShirouzu

 

タクシン元首相は2006年のクーデターで失脚した後、2008年に汚職罪で実刑判決を受けたが、服役を拒否。国外(中東ドバイ)で逃亡生活を続けた。

2023年8月に帰国後、拘置所に収容。9月に国王から恩赦を受けて2024年2月に仮釈放。

ただし、タイ検察当局はタクシン氏の過去の発言を盾にこの6月、不敬罪容疑で起訴している。こうした不安定要素の多いタイ政界を国際社会は冷ややかに眺めている。

 

(記・白水和憲)