どの国の政治家も他人を値踏みし、少しでも自分の得になると判断すればすり寄り、敵とわかれば遠ざけるか失脚させようと画策するか、であろう。一票を投じてくれた国民の目の届かないところで、味方と敵に色分けし、陣取り合戦にのめり込む。三国志の戦士気取りなのか、職業「病」なのか。
選挙民の同意を得ずに勝手な行動をする政治家は選挙で落選させるしかないが、如何せん、選挙の時は国民を騙す術に長けているのも政治家特有の、実にずる賢いところでもある。
昨今のマレーシア政界のドタバタも、政治家が自分たちだけの都合によって離合集散を繰り返し、混乱を招いている。
本HPの『アンワル・イブラヒム、20年ぶりに復活』(2018年11月2日付け)でも書いたように、「本当に首相になれるかは、まだ予断を許さない」と念を押した。
連立与党の内紛(マハティールとアンワルの対立)に端を発し、政権が崩壊。この3月にはムヒディン新首相率いる新政権が誕生した。マハティールがアンワルを「後継首相に」という禅譲の約束を反故にした結果、マハティールとアンワルは共に下野した。
再び政権への復帰を目論むマハティールとアンワルは各々自陣営の拡大に躍起だが、「マハティール氏とは組む気はないが、政権復帰できれば彼を上級相か顧問で迎えてやってもいい」(アンワル)と上から目線で言い放ち、「私と組む気がないなら、私も組む気はない。わが陣営はサバ州のシャフィー・アプダル州首相を次期首相候補として戦う」(マハティール)と対抗。お互いに歩み寄る気配はないものの、一票でも国民の支持を多く得たいのは両者とも共通する。
マハティールが次期首相候補にシャフィー・アプダル州首相の名前を挙げたのもアンワルの出方をうかがうための観測気球とは言え、その唐突ぶりには内外から反発の声が多く、早くも頓挫する可能性が高い。
もし、マハティールとアンワルが恩讐を超えて再々度の共闘にこぎつけたとしても、このドタバタは単なる三文芝居でしかない。国民が選挙ボイコットで政治に強烈な一撃を食らわさなければ、マレーシアには代表民主制の政治が機能していないことになる。
まぁ、日本の政界も二流政治家が「役場」の事務職員(別称、官僚とも言うらしいが)の筋書きに乗っかって三流政治の茶番を演じ、国民を泥船に乗せているわけだから、マレーシアの野党共闘の内紛をせせら笑うのは、それこそ天に唾する、ということか。
(白水和憲)