インドが新型コロナウイルス感染者数で中国を抜き、中東を除くアジアで最大となった。その数は10万人を超えた(5月19日16時現在、米ジョンズ・ホプキンス大学集計)。
3月25日にスタートしたインドの都市封鎖は、2度の延長(4月15日、5月4日)を経て、5月17日には3度目の延長を政府が決定した。期限は5月末まで。
ただ、感染が抑制された地域もあり、経済への影響を考慮して外出制限を段階的に緩和するケースもある。職場復帰する従業員全員に利用を義務づけていた接触者追跡アプリについても、「必須ではなく、出来る限り利用する」(インド内務省)という規定に変更されている。
その一方で、「感染のピークは6月から7月にかけて」(All India Institute of Medical Sciences)とする予想もあり、全土で全面解除するまでには至っていない。
とくに、衛生状態が悪いスラム街(ムンバイでは100万人が密集生活するスラムがある)、密集度の高い宗教関連集会、都市で感染した出稼ぎ労働者の帰省――などに起因する感染拡大だけでなく、手洗い設備など衛生環境の不備で院内感染が多発する病院もあり、感染の勢いは止まらない。
接触者追跡アプリなど最新ツールの導入さえモタモタしている日本に比べれば、インドはインドなりにあの手この手を使って劣悪環境を跳ね返そうとしている。指導者(首相)の力量の差か。
長引く外出制限で疲弊したインドの経済・消費を少しでもカバーするため、モディ首相は5月12日、労働者、農家、中小企業、中間層など広範囲な人々に向けてインドGDPの約10%相当の20兆ルピー(約28兆円)を経済対策パッケージとして投入することを発表した。
<追加情報>5月19日
12日のモディ首相による経済対策パッケージに続き、ニルマラ・シタラマン財務相が13日に中小企業向け、14日に農家・出稼ぎ労働者・都市部貧困層・小規模事業者・露天商などに向けて支援策の詳細を発表した。
例えば、中小企業向けには3兆ルピーの無担保ローンや5000億ルピー規模の資本注入、農家向けには3000億ルピーの追加緊急運転資金供給、出稼ぎ労働者には2か月間の無料食料提供、露天商向けに500億ルピーの流動性供給、出稼ぎ労働者と都市部貧困層などへの低価格集合賃貸住宅の提供――受益者を明確にした支援策は広範囲な分野にわたっている。
(白水和憲)