マレーシアの元副首相アンワル・イブラヒムが20年ぶりに復活した。
私がアンワル氏にはじめて会ったのは30年前の1988年4月。場所はムルデカ広場に近いクアラルンプール市西部、Damansara Hightsのマレーシア教育省。当時40歳で教育相だった。教育相というのは、次は副首相、そして首相へとつながるマレーシア政界の出世ポスト。事実、その後に43歳で財務相、46歳で副首相兼任となる。
1988年4月21日 教育省大臣室でインタビュー。当時40歳のアンワル・イブラヒム
(©1988KazunoriShirouzu)
当時の取材ノートを引っ張り出してみると、こういう問答があったことを書き留めていた。
白水: 「あなたは将来の首相候補との評判だが、あなたが考えられている国家政策というものをお聞きしたい」
アンワル: 「それは政治的な意味において非常に危険な質問だね、、(沈黙)」
最高権力者マハティール首相(当時)との関係に少しでも齟齬をきたさないように、言動を慎んでいたことがわかる。
しかし、結局はマハティールと金融政策で対立、1998年副首相を罷免され、なんと同性愛容疑で逮捕、有罪判決、刑務所に収監――。人生が暗転する。
2018年5月10日、マハティールが反ナジブ(=前首相)を掲げて勝利し、15年ぶりに首相に復帰。マハティールの強い意向を受けた国王はアンワルに恩赦を与え、5月16日釈放。マハティールはアンワルに公式に謝罪、2年後をメドに後継首相にするとしている。現在、アンワル氏は70歳。
本当に首相になれるかは、まだ予断を許さない。
(白水和憲)