ミャンマーのアウンサン・スーチー氏は、憲法上の規定から大統領職に就いていないが(※外国籍の家族を持つ人物の大統領就任禁止)、国家最高顧問兼外相の肩書ながらも実質的な最高指導者である。
10月8日、スーチー氏はJETRO主催「ミャンマー・投資カンファレンス」(東京・明治記念館)に集まった多くの日本企業関係者に向かって講演。スーチー氏自身がこれまで触れてこなかった(苦手との説も)経済問題について言及したことが注目された。
東京・明治記念館で(©2018KazunoriShirouzu)
企業関係者を前に政治・外交問題ばかりでは意味がないわけで、日本・ミャンマー共同開発のティラワ経済特区の事例紹介とその成果報告を盛り込んだことは評価されよう。しかしながら、世界が注視するラカイン州内のイスラム少数民族ロヒンギャ族の問題については、具体的な対応策を示さなかったことに参加者は落胆したのではないか。
翌9日のメコン川流域5か国首脳が参集した「日本・メコン地域諸国首脳会議」にもスーチー氏は登場した。自身が教育を受けた英国(調)の英語で流暢に講演したが、野党指導者時代のカリスマ性は薄れ、力強さを垣間見ることはなかった。
演説がうまかったのはタイのプラユット首相。しかし、ベトナムのグエン・スアン・フック首相、ラオスのトンルン・シースリット首相、カンボジアのフン・セン首相は、原稿の棒読みで目線が終始下向きだった。とくに、国内では強面で知られるフン・セン首相は借りてきた猫のようで、その内弁慶ぶりが際立ってしまった。
(白水和憲)