日本企業、草木もなびくように我も我もとベトナムへ

 ベトナムのグエン・スアン・フック首相が来日、『ベトナム投資カンファレンス』(ホテルニューオータニ、7月1日)では1000人を超える日本企業関係者に向かって、「人口1億人弱、経済成長率は7%超、世界中の大企業がベトナムに投資している」と自信に満ちた笑みを見せた。フック首相立会いの下、同会場の檀上では住友商事の工業団地開発など32件(総額70億ドル)の協力覚書(MOU)が各案件ごとにすべて署名された。同日、官邸では安倍首相との首脳会談も行われている。

合計32件のMOU(協力覚書)の交換式にも壇上で立ち会ったフック首相
(ホテル・ニューオータニ)
20190701©KazunoriShirouzu

 2018年ベトナムの新規FDI(外国直接投資)は約191億ドルと好調で、6年連続の過去最高を更新。日本からは約85億ドルが認可され、国・地域別では2年連続トップ。以下、韓国、シンガポール、香港、中国と続く。

 フック氏は2011年8月に副首相、2016年4月に首相に就いた。首相就任当時、日本のメディアはフック氏が親中派だったグエン・タン・ズン前首相のもとで官房長官、副首相を約9年間も務めた経緯から、「フック首相は親中派」と書いたが、その根拠は怪しい。実は、日本嫌いと目されてきたグエン・タン・ズン前首相でさえ、日本への公式訪問(夫妻)の際、皇居・宮殿での天皇・皇后(=当時)との会見では180度異なる態度で臨んだほど。

 フック首相の今回の来日はG20大阪サミット(6月28~29日)出席のためだったが、いったん帰国し、すぐに再来日してカンファレンスに参加という慌ただしいスケジュール。日本企業や安倍首相と仲よくすることが自身の立場(首相)を確固たるものにする最良の方法と心得ているようだ。

メコン川流域5か国首脳が参集した「日本・メコン地域諸国首脳会議」(2018年10月9日、パレスホテル)の集合写真で安倍首相の隣りに並ぶフック首相
20181009©KazunoriShirouzu

 一方、進出ラッシュの兆しが出始めると、いっせいに便乗進出するのが日本企業の特性(行動様式)であり、かつての80年~90年代のタイ、90年~2000年代の中国、そして今回のベトナムである。よくも悪くも、集団行動の効果はあるようで、これまで韓国や中国の陰に隠れて地味な存在だったベトナムの日本企業にフック首相の目が向いたことだけは間違いない。そうでなければ、首相就任後の2016年5月、2017年6月、2018年10月、2019年6月と頻繁に来日し、安倍首相と毎年首脳会談するはずがない。

 日越関係の蜜月に力づけられたか、日本企業のベトナム進出はこれからさらに加速しそうな気配だ。

(白水和憲)

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