東南アジアのラストフロンティア、ミャンマー

 ミャンマー中西部の沿岸に位置するラカイン州にはロヒンギャが住む。仏教国ミャンマーでロヒンギャは少数派のムスリム(イスラム教徒)。政府も国民もロヒンギャを「民族」として認めておらず、あくまで不法移民集団という位置づけ。差別と迫害、軍や警察による厳しい取り締まりなどで、ロヒンギャは隣国バングラデシュに50~60万人規模で大量流出、国際問題にまで発展している。

 軍によるロヒンギャ虐殺(2016年)を契機にアウン・サン・スー・チー国家最高顧問はノーベル平和賞受賞者(1991年)であるにもかかわらず、有効な解決策を打ち出せないということで海外から激しく非難され、ここ数年、彼女の顔から笑顔が消えた。

 そのスーチー氏、天皇・皇后の「即位の礼」(10月22日、東京)参列のために来日。その前日の21日には明治記念館(東京)において約700名の日本企業関係者を前に「日緬両国の信頼とより一層の経済緊密化に向けて」というテーマで講演、ミャンマーへの投資誘致をアピール。壇上のスーチー氏の表情を見ると、やや和らいでいるのが分かった。膠着状態だったロヒンギャ問題にも少なからずの前進があった模様。

久方ぶりに笑顔を見せるアウン・サン・スー・チー国家最高顧問
(於:東京 明治記念館、2019年10月21日)
©2019KazunoriShirouzu

 いま、ミャンマーは“アジア最後のフロンティア”と呼ばれている。しかし、私はこのフレーズをすでに20数年前から聞いてきた。長期にわたる軍政、アメリカからの経済制裁など成長を阻害するマイナス要因もあり、停滞した。突破口がない中でも日本企業は辛抱強くミャンマーの成長を待ち続けた。民政移管を果たした2010年頃から成長の気配を強め、2019年9月時にはミャンマー日本商工会議所会員数も401社にまで増えた。

 ところがこの数年、欧米・アジア企業の興味はインド、中東・アフリカなどの西方地域に移り始めている。中国や東南アジアよりも市場の潜在力やビジネスチャンスが期待できるからだ。どういうわけか、日本企業は東南アジアが“大好き”で、インドや中東・アフリカは苦手である。数あるフロンティアのひとつでしかなくなったミャンマーだが、日本企業からは依然と“ラストフロンティア”というポジションを与えられることだろう。まだしばらくの間は、、、。

(白水和憲)