2021年1月31日、ベトナムでは第13期共産党大会でグエン・フー・チョン書記長が再任された。1976年南北統一以後では初めて3期連続の書記長となる(1期は5年)。1944年生まれ、77歳。
また、第14期第11回ベトナム国会ではチョン書記長が2018年10月から兼任していた国家主席のポストにグエン・スアン・フック首相(66歳)、その後任首相にはファム・ミン・チン中央組織委員会委員長(62歳)が各々4月5日付で就任した。
写真© = 2019©KazunoriShirouzu
2020年10月、日本の菅義偉首相が首相就任後の最初の外国訪問先として選んだのがベトナム。その際にチョン氏、フック氏、チン氏の3人とも会談を行っている。
チョン氏は長年親中としても知られる。フック氏は首相就任前は親中と目されてきたが、首相になると親日に転じて頻繁に訪日し、日本企業のベトナム誘致に熱心となった。チン氏は越日友好議員連盟会長を務め、両国の友好を推し進めてきた経緯がある。
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この国家主席と首相の新人事を以て日本では「ベトナムを舞台に対中包囲網の環境ができた」とぬか喜びする人たちがいるが、そうは問屋が卸さない。からめ手でアメリカや中国を相手に抗ってきた歴史を持つベトナムだけに、真正直というか、一直線(単純)思考の日本が交戦巧者のベトナムと相対する時は、よほど用心した方がいい。
そもそも過去に「親日」と形容されてきたアジアの首脳たちも、日本に甘かったわけではない。日本人は「親日」という言葉にめっぽう弱い。
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今流行りの「論語とソロバン」ではないが、「一帯一路」の大義名分を掲げ、「友好と援助」(実態は“友好のポーズ”と“カネの貸付”)で近づいてくる中国の甘言ほど魅力的かつ怖いものはない。パキスタンやスリランカはうかうかと中国の甘言に乗り、借金を返せず主要港を質草(しちぐさ)に取り上げられてしまった。
ベトナムとて国益とあらば中国側に転ぶ選択だってある。ベトナム人の孤高の精神を信じたい。
(白水和憲)