蜜月ぶりが際立つカンボジアと中国、はじき出されるのは日本か

 中国は近年、「一帯一路」政策遂行の上でもカンボジアへの入れ込み方が半端ではなく、貿易・投資両面での進出が加速している。中国南部の雲南省がラオスと国境を接するが、そのラオスの南側がカンボジアである。中国はこの雲南省・ラオス・カンボジアのラインを通して海(タイ湾)に出ることができる。ラオスの親中ぶりは以前からつとに有名だが、カンボジアも同様の関係。つまり、中国にとってこのラインはおいしいルートであるのは確かだ。

 習近平中国国家主席はカンボジアの地理的優位性(インドシナ半島の南部)をフルに活用するためにカンボジアを取り込んだが、一方のカンボジアのフン・セン首相にとっても政治的にも経済的にも「困った時の習近平頼み」という依存関係にあることを公言する。 

カンボジアのフン・セン首相(来日時に撮影)           写真=©KazunoriShirouzu 

 一方の日本は、1992年~1993年PKO(国際連合平和維持活動)の一環でカンボジアに自衛隊が派遣された時期をピークとして、それ以降、日本の存在感が年々薄まっているのは寂しい。

 貿易額は2019年日本からのカンボジア輸出が5.623億ドル、カンボジアからの日本輸入は17.306億ドル規模にとどまっている(出典:Global Trade Atlas)。そうしたところに、2020年10月、中国がカンボジアとの間でFTA(自由貿易協定)を締結、2023年までに年間貿易額100億米ドルの目標を掲げたが、カンボジア商業省の5月発表では、直近の2021年1~4月ではや30億ドルに達し、今年100億ドル突破の可能性も出てきた。日本と中国の対カンボジア貿易の差はますます開く。

プノンペン経済特別区の近くには川港のプノンペン港がある        写真=©KazunoriShirouzu

 投資優遇地域である経済特別区(SEZ)でも大きな変化がみられる。中国は2008年、カンボジア南部に「シアヌークビルSEZ」を建設し、中国企業の入居は100社以上に達し、成功している。日本が2006年に開発協力した「プノンペンSEZ」では、2015年2月時点で日系企業が42社で一番多く、中国企業はベスト5にさえ入っていなかった。ところが、2020年12月時点で日系企業は45社(投資額は2.49億ドル)と3社しか増えていないが、中国は何と25社(同1.89億ドル)にまで増えて第2位にランクアップ、日本を猛追する。

 カンボジアではどの都市どの地域でも中国人をみかけるが、日本人とはSEZ以外では滅多に出会わない。このままいけば、カンボジアは名実ともに東南アジア第一の中国の友邦国としての地位を盤石にし、日本ははじき出されてしまうのではないか。

中国企業の貨物取り扱いが多いシアヌークビル港            写真=©KazunoriShirouzu

シアヌークビルはタイ湾に臨む    写真=©KazunoriShirouzu

 今年2月、Zoom会議『カンボジア中銀デジタル通貨“バコン(Bakong)”の可能性と展望』に参加した。バコンとは、ブロックチェーン・分散型台帳技術(DLT)に基づく新たな決済インフラのことである。日本企業のソラミツが開発した“Hyperledger Iroha”というDLTの基盤を使い、QRコードでの送金を実現するとしている。

 先進的な日本企業の登場は実に喜ばしいことだが、抜け穴だらけの前近代的カンボジア金融界を牛耳る中国に、この先進技術が横取りされ、金融面でも日本がカンボジア版中国ルールの軍門に下りやしないかと危惧している。

(白水和憲)