国を私物化したスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が7月13日未明、国外逃亡した。逃亡先は、モルディブ経由のシンガポール。どうやら兄で元大統領・首相のマヒンダ・ラジャパクサ氏もモルディブで合流し同じ飛行機(サウジアラビア航空)でシンガポールに逃げた模様。
ゴダバヤ・ラジャパクサ氏とマヒンダ・ラジャパクサ氏は兄弟。兄マヒンダは2005年から2015年まで大統領だった。2019年に弟ゴダバヤが大統領になると、兄マヒンダが首相となる。
この間、2017年には南部のハンバントタ港の運営権が中国の手に渡り(99年間)、世界は驚いた。ハンバントタ港はインド洋の要衝で、ここが中国の手に落ちればインド洋のパワーバランスが崩れるのは必至。
中国マネーで経済発展とインフラ整備(港湾、空港、高速道路、金融センター)を目論んだラジャパクサ兄弟。一方、スリランカを借金漬けにした挙句、質ぐさ(ハンバントタ港)をわずか11億ドルで取り上げた中国。
2020年からのコロナ禍、2022年2月にはウクライナ・ロシア戦争も勃発。そうした影響を強く受けて基幹産業の農業や観光が瀕死の状態となり、外貨不足とガソリン値上げが追い打ちをかけた。失業者があふれ、10万人規模のデモの矛先は国を食い物にしてきたラジャパクサ兄弟に向かった。
スリランカのGDPは819億ドル(世界70位、今年4月IMF発表)だが、そのうち510億ドル(62%相当)もの外国債務を抱える。中国だけの債務は50億ドルに上る。
中国はいいとこ取りもしたが、同時に貸し倒れリスクも抱え込んでしまっている。それでも、弱ったスリランカをさらに餌食にする可能性が高かったが、親中派のラジャパクサ3兄弟(ゴダバヤとマヒンダに加え、末弟バジル・ラジャパクサ財務相)の失脚で、これ以上中国も手が出しにくいだろう。
7月20日、スリランカ議会は5月に首相になったばかりのラニル・ウィクラマシンハ氏を新大統領に、22日には与党スリランカ人民戦線(SLPP)のグナワルダナ元外相を新首相に指名した。ともにラジャパクサ一族との関係が濃く、同じ穴の狢(むじな)とみる向きも多い。もう一波乱ありそうだ。
(記・白水和憲)