“グローバルサウス”とは単なる流行語か?

最近の国際会議では“Global South(グローバルサウス)”というキーワードが頻繁に登場する。

しかし、分かったようで分からないまま議論が進んでいる。G7やBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南ア)のように特定国を指す用語とは違って、先進国が集まる北半球のGlobal Northに対し、発展途上国が多く存在する南半球のGlobal South――というグループ分けのようだが、これも実に曖昧で大雑把な括りとの印象が強く、学術的な定義もない。単なる流行語に終わる可能性もある。

旧来、盛んに議論されてきた先進国の“北”と遅れた途上国の“南”、いわゆる“南北問題”とはどこが違うのか。Global Southに属するのか属さないのかさえ分からない中国やインドはGDP規模だけでみれば「大国」と言ってよい。

3月6日、『Emerging Powers in the “Global South” and the Restructuring of the World Order』と題する国際会議(会場+Zoom=1,000名)に参加した。

そこで某パネリストの「グローバルサウスとは、理念のない圧力団体」という辛辣な発言が飛び出したが、なぜか納得してしまった。

無理やりグループ化して大勢で交渉の場に臨もうとする政治・経済団体の勇ましい姿と重なるからだ。

基調演説で登壇したインド出身のロンドン大学キングスカレッジHarsh Pant教授は、Global Southの進む方向は「中国とインドの関係が大きく左右する」と指摘する。その発言の真意は、Global South諸国は中国とインドの陣取り合戦に巻き込まれる可能性があると示唆しているのではないかと感じた。

 

基調演説したインド出身のロンドン大学キングスカレッジ Harsh Pant教授

(2024年3月6日、東京)

Zoomによる写真撮影=©KazunoriShirouzu

 

1950年代の冷戦時代、米ソ陣営から距離を置き、中立主義と反植民地主義を掲げて一大勢力となったのが非同盟中立運動である。そこには第3世界を代表するネルー(インド首相)、ナセル(エジプト大統領)、チトー(ユーゴスラビア大統領)、周恩来(中国首相)という世界的なリーダーがいた。

しかし今、かつてのような傑出した人物はいない。

昨年9月のG20ではインドのモディ首相が見事な議長ぶりを発揮して評価を高めた。そのモディがG20での活躍の勢いのままGlobal Southの新リーダーとして祭り上げられそうな気配だ。

しかしながら、Global Southという巨大な一団を引っ張っていけるまでの強いリーダーシップがモディにあるのかどうか、、、。

 

ガンディー像の横でほほ笑むモディ首相(グジャラート州アーメダバードで)

写真撮影=©KazunoriShirouzu

 

そもそも圧力団体のトップは政治的資質というよりは、“数の論理”で座った飾り物でもいいわけだが、それでもそれなりの存在感は必要とされる。

モディも習近平(中国国家主席)も国内政治にだけ熱心な内弁慶的政治家との印象が強いが、果たして世界的指導者としての資質があるのかどうか、まだ分からない。

 

参考:

某誌に掲載された「グローバルサウス」に関連する白水作成の記事(オリジナル原稿)。著作権の関係で雑誌名は非公表(白水)

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「日本は新“強国”インドの登場をどう見るか」

 

(記・白水和憲)