アメリカが北朝鮮に迫っている非核化は、結局のところ、米中協議でしか解決できない。当事者の北朝鮮、さらにはその双子国家である韓国も脇に追いやられている。付録扱いの日本は関与することすら期待できない。
1月7日~10日に中国を訪れた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は習近平中国国家主席と会談。以前の会談では師匠(習近平)の前でメモを取る弟子(金正恩)という構図が顕わにわかる動画が流れたが、今回も同じ関係だろう。
その直後、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が早速1月11日、操業停止中の開城工業団地の再開について、大量現金の一括支給を禁止する北朝鮮制裁に抵触しない手法(例えば、現金ではなく現物支給など)を模索していることを明らかにしている。
開城工業団地の規模は2013年時に韓国企業123社、北朝鮮労働者約5万3000人。2016年に長距離ミサイル発射で経済制裁を受け、閉鎖。韓国が北朝鮮に支給した賃金は「2015年に1億2224万ドル」(韓国・中央日報の報道)。
要は、北朝鮮が切望する開城工業団地再開を韓国が賃金と同等の現物支給で迂回して助太刀する、という意味だ。しかし、アメリカや中国の内諾と協力が不可欠である。従って、北朝鮮と韓国は各々が米中との個別首脳会談を通した北朝鮮制裁解除の一括妥結交渉と並行して現実的な対処療法(現物支給)交渉も進めるが、実際は米中会談がまず落としどころを決めるのが先となるだろう。
その時、日本だけが蚊帳の外、ということになりかねない。日本には秘密裏に交渉の担い手(人材)となる政治家も外務官僚もいないのが致命的である。
(白水和憲)